三宅鉱一「犯罪人(不良少年を含む)の予後」

三宅鉱一「犯罪人(不良少年を含む)の予後」上・中・下『刑事法評林』1(1909), 401-415; 2(1910), 33-50; 160-170.
大正期に社会のそれぞれの部分に浸透することを目指すようになった日本の精神医学において、新刑法の制定に反応して、犯罪と精神医学の関係は知的に重要な問題になった。国際的にも、ロンブローゾの犯罪者と精神病者の説に応じて、精神医学と犯罪の関係、さらには精神病と社会的に問題がある行為との関係は、多くの研究がなされているエキサイティングな問題であった。東大の三宅は、『医学中央雑誌』74号に、精神病遺伝についての学説紹介を書き、遺伝を軸として犯罪者であれ精神病者であれ、人間の行動を再構成する知的プロジェクトの中心人物であった。その三宅が、法律関係者を念頭において書いた力作である。基本はドイツを中心とする研究紹介であるが、ポイントをくっきりと力説する必読論文だと思う。

基本、ロンブソーソの発想を踏襲して、犯罪者と精神病患者には変質徴候があるという部分は守っている。彼の師の呉秀三が言っていたように、各論においてはロンブローソを否定しており、たとえば、世代を経ると変質徴候が加重して死に至るなどの説は退けているが、大枠においてはその説をマ燃えっている。そして、悪名高い「中間者」というくくりの概念を提出し、中間者と犯罪者は、どちらも遺伝的にひきつがれること、犯罪者には変質徴候が多いこと、犯罪者各個人についてみると、監獄収容の効果とは見られない精神病者が多いことなどを論じている。