17・18世紀の精神病患者の収容

Dilling, Horst, Hans Peter Thomsen and Fritz Hohagen, “Care of the Insane in Luebeck during the 17th and 18th Centuries”, History of Psychiatry, 21(2010), 371-386.
リューベックにおける貧民救済の一環として17世紀の初頭に建てられた特別に狂人を収容した施設の研究。狂人専用の施設としては、かなり早いもののひとつになる。1788年に新しい建物に移行し、それから1828年まで継続する。1602年から1828年までが研究対象で、17世紀は166人、18世紀の1788年までは186人、1788年から1828年には210人が入院している。おもしろいのは、直線的に改善するのではなく、当初は監獄のようであったものが、18世紀に改善し、18世紀末から19世紀初頭にかけてまた悪化しているということ。これは、イギリスの研究が明らかにした、18世紀末から19世紀初頭にはナポレオン戦争の影響などで、精神病院の生活水準が低下したということと一致はしていないが、パラレルである。「ピネル以前」の精神病患者の収容が、すべて暗黒時代であったと考えることに対する注意を喚起するもう一つの論拠となるだろう。