ファシズム下イタリアの精神医療

Piazzi, Andrea, LuanaTesta, Giovanni del Missier, Mariopaolo Dario, and Ester Stocco, “The History of Italian Psychiatry during Fascism”, History of Psychiatry, 23(2011), 251-267.
ナチ時代の精神医学が行った巨大な蛮行を知ると、同じファシズム期におけるイタリアや日本の精神医学は同じような理念に基づいた蛮行を行ったのかという疑問が当然のように思い浮かぶ。日本の医療は「ファシズムの医療」と言えるのだろうかという疑問である。複雑で深い問題である。

この論文のポイントは、イタリアのファシズム期の精神医学と、ナチス・ドイツの精神医学は非常に異なっていた、ということである。一言で象徴するとしたら、「精神病患者を抹殺しようとしていたドイツに対し、イタリアは電気ショックの衝撃で治療しようとしていた」ということになるだろう。

ファシズムは1922年に権力をにぎり、第二次世界大戦末まで独裁体制をしいていた。それより前は、リベラルな政府が、マラリア、結核、梅毒、ペラグラ、甲状腺腫、アルコール依存症などの慢性疾患に取り組んでいた。ファシズムはこれを継承し、地方から国家の業務の中に取り組み、合理化した。この健康運動の中から精神医療の改革は除外されていた。精神病院の数も、ほかの先進国並みには増えなかった。精神病院への入院は、60%は梅毒や脳炎やアルコール中毒。

・・・これは、とても日本と似ていませんか?そうか、イタリアの精神医療と比べたらいいのか。思いつきもしなかった。