緒方洪庵

Najita, Tetsuo, “Ambiguous Encounters: Ogata K?an and International Studies in Late Tokugawa Osaka”, in James L MacClain and Wakita Osamu eds., Osaka: the Merchant’s Capital of Early Modern Japan (Ithaca: Cornell University Press, 1999), 213-242.
未読山の中から、テツオ・ナジタによる緒方洪庵の研究を読む。論旨が明快ですぐれた論文。話のポイントは二つあって、ひとつは、適塾出身の福沢諭吉がのちに描いた近代主義者・反漢方医学主義者としての洪庵と適塾の一面性を訂正して、洪庵が構想した医療の儒教的な基盤を明らかにすること。言葉を換えると (in other words)、福沢が「明治から見た洪庵・適塾」の姿を描いたのに対して、この論文は、「江戸の発展としての洪庵・適塾」を描いている。もう一つは、それに関連することであるが、儒教と漢学の基礎を学んだあとで「言語を習得する」ことを中心に据えた蘭学が行われたことである。

ちなみに、コレラを「コロリ」といい、これに「コレラ」という語の音に似せた洒落と、三日で「コロリ」と死んでしまうということをかけ、さらに、虎―狼―狸という三種の動物の音を重ねたことはよく知られている。これを英語にすると、虎はtiger、狼はwolfというのは何の問題もないが、狸が raccoon dog というのが、どうもおさまりがよくないなと思っていたら、これを badger (アナクマ)の語を使っていた。なるほど!