三本足のカラスと新年の太陽儀礼

『野鳥』というタイトルの日本野鳥の会の会報がある。会員からの投稿やお知らせなどの雑駁な記事が多いけれども、メインになる記事は、本格的な内容をわかりやすく語った本格的なものであることが多い。

今月は、お正月とカラスの特集ということで、荻原法子さんという民俗学者が書いたものだった。とても面白かった。熊野の神社などで、元旦の儀式において重要な役割をはたす三本足のヤタガラスにはじまり、いろいろな民俗が紹介されていた。カラスと正月の儀式については、那智大社では、元旦の夜明けに神主が山の上にのぼり、太陽が太平洋にのぼった瞬間にさしこんだ光を装束につつんでお宮に持って帰る儀式があるという。また、昔、太陽は十個あり、それが一度に空に現れて照りつけた時に大地が焼け焦げ、弓の名手が九つの太陽を射落とすという神話があるとのこと。そのときに、太陽を象徴するカラスを射落とすのだそうだ。これは、月を象徴するウサギを射ることと合体して、「オビシャ」と呼ばれて利根川流域に分布している民俗であるとのこと。