武村政春『ろくろ首の首はなぜ伸びるのか』

武村政春『ろくろ首の首はなぜ伸びるのか』(東京:新潮社、2005)
「遊ぶ生物学」という趣向で、妖怪や空想上の生物を取り上げ、それらが実在するとしたら、どのような生物学の原理・法則で動いているのかという冗談を大真面目に話した本である。ギリシアの半人半獣のケンタウロスの内臓はいったいどこにどのようにあるのかとか、『平家物語』に登場する「ぬえ」は、狸と猿と虎と蛇のキメラであり、キメラは免疫学的な自己が他者を攻撃して組織が死んでしまうのだが、免疫寛容がはたらくと四種類の動物の混淆も可能になるだとか、そういう冗談である。私が一番面白かったのは、ドラキュラがなぜ太陽の光を浴びると灰になってしまうのかという話で、ドラキュラの先祖はミドリムシで、もともとは光合成をするクロロフィルがあったが、それをドラキュリンというたんぱく質で覆っているのでいつもは光合成しないし、緑色でもない。しかし、太陽光にあたると、クロロフィルが猛烈に光合成するので、その時に発生した酸素が爆発的に燃焼するからだという。

私が書きなおすと全然面白くないけれども、もともとの文章を面白いと思う人は、一定数はいるだろうなと思う。一番不思議なことは、なぜ、この本が to read として積まれていたのかである。