『変態心理』よりメモ

諸岡存「ヒステリーと迷信」『変態心理』1(1917-8), 62-63
狐憑き、千里眼、魔術、降神術、こっくりさん、地獄極楽図などは、みなヒステリーの現象であり、一種の催眠状態である。聖母マリアも立派なヒステリー患者であり、人をだまし、人にだまされる。妖僧とか怪僧などに騙される貴族の女性もみなヒステリーであり、これらの病気は、家を滅ぼし国家や社会を破滅させる。「独探」のごとき。

上野陽一「正態と変態」『変態心理』1(1917-8), 81-86.
人々は少数をきちがいといって、座敷牢や病院にいれるが、両者の間に判然たる区別があるわけではない。精神病患者の症候は、吾はキチガイではないとうぬぼれているものにも現れている。自分を研究しようと思ったら、精神病院に行って、自分に似た奴を探せ。精神病は、まるで顕微鏡のように、我々にもある精神病の徴候を拡大するものだから。

森田正馬「迷信と妄想(一)」『変態心理』1(1917-8), 87-98.
渋沢の青渕百話
15歳のときに姉が発狂し、遠加美講の修験者が三人来て祈祷をした。そこに神が降りて話すための「中座」というものが必要な儀式だった。渋沢少年は、嘘を見破ろうと思って、その場にいた。儀式が進行すると、注座は神の声になって、この家には無縁仏がいて、それがたたっているという。渋沢の叔母は信じたが、渋沢は、「神ならば知っているだろう」と言って、それはいつか、その年代は何かと中座を問い詰めて、70年余り前と言っているのに、23年年前でしかない年代を出してきたといって、神様なのに年代も計算できないのかといって、中座と修験者をやりこめた。
精神活動は、蒸気が機関車を廻すように、電流がダイナモを廻すような、エネルギーの回転である。