精神病患者記録の利用

Haefner, Heinz and Wolfram and der Heiden, “The Contribution of European Case Registers to Research on Schizophrenia”, Schizophrenia Bulletin, 12(1986), 26-51.
ヨーロッパやアメリカでは、精神病院は公立であることが標準的であったので、精神科の患者記録をはじめとする症例誌は公文書である。そのため、保存や公開について一定のルールが作られやすく、その作業を核にしてアーキヴィスト、歴史学者、精神科医の協力が成立してきた。私がイギリスで習った患者資料の利用という基本的な操作も、その動きと確かに関連している。この1986年の論文は、これまで Case registers を用いたさまざまな研究の手法を紹介している、非常に便利な論文である。症例誌のアーカイヴを見つけたら、この論文をめくると、どのようなデータをとってどのような研究ができるのかということが分かるヒントになる。便利なアイデア集として、また、歴史学者として自分の議論を現代の関心につなげるヒントを発見するヒント集として、大いに使える。