アイヌは血液検査を受け入れたか?

北海道庁警察部『旭川区近文部落―旧土人衛生状態調査復命書』(1916)
北海道庁警察部『余市郡余市町―旧土人衛生状態調査復命書』(1916)
北海道庁警察部『沙流郡の一部 室蘭郡の一部―旧土人衛生状態調査復命書』(1916)
大正5年に出版されたアイヌの健康調査の資料に目を通す。健康調査において行うことができなかったものは、結核検査において喀痰をとること、梅毒診断のワッセルマン検査を行うために採血すること、性器を検査すること、である。それらを行うことができなかったので、結核においても梅毒においても臨床的な外見だけが診断の道具であった。診断を確定できない不利な条件のために、医者たちは、調査の結果の数値よりも、実際の数値は高いものであると思っていた。特に梅毒に関して、この疑いを強く持っていた。

ついでにいうと、1930年代の後半の内村の調査においては、ワッセルマン検査は受け入れられているように見える。20年間の間に、ワッセルマンを拒絶する状態から、それが行われるという状態に変わったと考えることができるから、もしいい資料があれば、短い論文を一本書くことができるんだけどな。