『カーマ・スートラ』新訳

Vatsyayana, Kama Sutra: A Guide to the Art of Pleasure, translated by A.N.D. Haksar (London: Penguin Books, 2011). 
『カーマ・スートラ』の新しい英訳が出たので、読んでみた。いわゆるバートン訳と言われる1883年に出版されたものが英訳では有名で、日本では東洋文庫の翻訳が学術的に優れたものであるとのこと。

いわゆるバートン訳については、悪いことばかり言われている。その不正確さ、いい加減さ、きわどいところを選んで訳しているあざとさなど、翻訳者として我慢できない点が多いらしい。でも、学術的に正確なだけの『カーマ・スートラ』よりも、読んで面白いほうがいいと思っていて、私はバートン訳になんとなく好意的だった。

ところが、この新訳は、読んで面白い。はっきりいうと(笑)、その表現に心が揺れる。もともと、『カーマ・スートラ』はそれまでの知識を整理した学術的な性格を持った百科事典的な要素が強く、決して情念をかきたてることだけが目標ではないけれども、その中に情念をかきたてる言葉をちりばめることも大事な役割だったと私は思っている。その意味で、この新訳は、双方において成功しているのではないかという印象を持った。

以下は、ネット上から拾ってきた、バートン版の The kiss についての記述である。これも十分情念に訴えるけれども、新訳はもっとよかったです。どうか、お手にとってくださいな(笑)

Now in a case of a young girl there are three sorts of kisses:
The nominal kiss
The throbbing kiss
The touching kiss
When a girl only touches the mouth of her lover with her own, but does not herself do anything, it is called the‘nominal kiss’.
When a girl, setting aside her bashfulness a little, wishes to touch the lip that is pressed into her mouth, and with that object moves her lower lip, but not the upper one, it is called the ‘throbbing kiss’.
When a girl touches her lover’s lip with her tongue, and having shut her eyes, places her hands on those of her lover, it is called the ‘touching kiss’.