栄養学と身体と食品産業

Scrinis, Gyorgy, “On the Ideology of Nutritionism”, Gastronomica, 8(2008), 39-48.
食品を、その<栄養>を中心的に見る考えを「栄養主義」と名付け、その栄養主義がこんにちの社会において機能するメカニズムを考察し、特に食品産業との連関をスケッチした理論的な論文である。食品を栄養の集合体として考える見方は、それがもつ官能的・文化的・エコロジカルな部分に着目する考え方と対をなすものである。マーガリンよりも美味しいけれども栄養学的には劣っているバターの例を考えればよい。(ちなみに、私は申し訳ないけれどもバターが好きである)一方で、身体もバイオケミカルな機能の集合体として理解され、病気や健康という1つの状態で捉えるのではなく、それぞれの機能に役に立つ特定の栄養素を含む食品という形で食品が機能に対応する。そして、その結果、特定の機能に役立つ特定の食品が産業によりプロモートされる。多くの機能に役立つと、その食品は「スーパーフード」になる。