高橋英次『優生学序説』(1952)

高橋英次『優生学序説』(1952)
分裂病の遺伝については、それが遺伝と深い関係を持っていることについては合意があったが、その遺伝様式のメカニズムになるとさまざまな異なった意見が存在した。たとえば、単純な劣性遺伝であるとするもの、主要遺伝質と副遺伝子の組み合わせが存在するという意見、その中で遺伝質が優性か劣性かという考え方の違い、2対の劣性遺伝子が関係するという意見などがあった。
精神病調査においては、明確な診断基準によって判断される分裂病、癲癇、躁鬱病という疾病そのものよりも、その周辺に存在するとされていた、あいまいな症状や状態の集合も大切であった。たとえば癲癇においては、偏頭痛、けいれん性疾患、夜尿症、夢遊病、低能、非社会的精神異常などが、遺伝的に重要な現象となる。あるいは、ヒステリーも癲癇患者の家族中によく現れる。一方で、強迫観念症は分裂病や躁鬱病の負因として目立つこともあると言われる。
ヒステリーについて、ヒステリー性反応様式を示し、社会的異常性格であるものと、社会にとって有用だが一時的なヒステリーを示す患者という区分がされている。