松沢病院における患者が書いた「日誌」



阿部良男「本邦人に於ける混合精神病の研究―混合精神病の臨床像」『神経性神学雑誌』48(1944), 135-171;阿部良男「本邦人に於ける混合精神病の研究―混合精神病の構成、特にその遺伝病理学に就いて」『神経性神学雑誌』48(1944), 172-205.
阿部良男は内村祐之門下の学生で、八丈島の精神疾患調査にも参加している。この論文は、松沢病院に入院している患者の中から、分裂病と躁鬱病のクレペリンに二大内因性精神病が混合しているような患者を40名ほど選び、彼らの病像の年単位での変移のパターンをつかみ、彼らを発端者としてその病気の遺伝関係を調べたものである。クレッチマーの体質論と優生学がもてはやされていた時期の精神病の遺伝と家系図の理論がよく分かる。

患者自身による言説について。P.141 & 145. 患者が松沢病院の用紙に書いたある時期の日誌が引用されている。これは、私自身がしばらく前から考えている、収容型施設に入れられた患者が、沈黙させられたり、封殺されたりするというよりむしろ、ものを積極的に書くようになるのはどういう意味があるかということを考えるためのメモ。