16世紀イタリアの<胆石・結石>は奇跡か異常か

Touber, Jetze, "Stones of passion: Stones in the internal organs as liminal phenomena between medical and religious knowledge in Renaissance Italy", Journal of the History of Ideas, 2013, 74(1): 23-44. 15世紀から16世紀のイタリアにおける聖性と自然の異常さの関係。結石や胆石など、体内で形成された「石」は、聖なるしるしであると考えられることがあった。それが与える痛みは受苦であり、三つ発見されると三位一体のしるしと考えられた。イグナティウス・ロヨラや教皇ピウスV世の体内で発見された「石」は、彼らの聖性のしるしの脈絡の中で議論された。この流れの中で、「石」の形成の意味を読み解くことが当時の医学に期待された。結石や胆石はよくあった病気であるが、その生理学的な形成についての意見は、体液説から天体の影響までさまざまな説が混在していた。このため、胆石・結石を超自然な出来事や奇跡であると捉える方向に働かなかった。