「サイケデリック」と文学者と精神科医の二行詩

“psychedelic” という語が作られた経緯が面白いのでメモ。19世紀の半ばから、アヘン、ハシシ、メスカリンなどの向精神物質 (psychotropics)を服用してその効果を記すことは、ボードレールベンヤミン、アンリ・ミショーなどの古典的な作品を生んでいる。20世紀の後半に薬物使用がいわゆるヒッピーの若者に流行した時には「サイケデリック」(psychedelic)という語が用いられた。この語は、文学者オルダス・ハクスリーとカナダの精神科医のハンフリー・オズモンドが共同して作ったものである。1953年にハクスリーがオズモンドに請うてメスカリンを服用し、この経験は翌年出版された『知覚の扉』で雄弁に語られている。二人は友人になり、この新しい物質に名前をつけるべく手紙を交わして議論をしていた。両者の文通を芝居風に記すとこのようになる。 Huxley: To make this mundane world sublime Just half a gram of phanerothyme. Osmond: To fall in Hell or soar Angelic You’ll need a pinch of psychedelic. Psychedelic というのは、精神を現す psyche という語と、「明らかさ」を現す delosから作ったという。 OEDは少し別のヴァージョンを引用しており、To fall in Hell でなく、To fathom Hell としている。