「生きる価値がない生命の破壊」―英訳 Kindle 版をチェック

Karl Binding and Alfred Hoche, Allowing the Destruction of Life Unworthy of Life: Its Measure and Form, translated by Cristina Modak (2012) http://www.amazon.co.jp/Allowing-Destruction-Life-Unworthy-ebook/dp/B00AR34GZA/ref=sr_1_2_bnp_1_kin?ie=UTF8&qid=1382789554&sr=8-2&keywords=binding+hoche 法律教授のビンディングと精神医学教授のホッヘの両者が執筆した「生きる価値がない生命の破壊を許すこと」は、1920年に出版されてすぐに大きな論争を呼んだ論文であり、1933年に政権を奪取するナチスの優生学的な政策の基盤とされるという役割を担うことになった。日本語訳も出版されているが、その英訳をKindleで購買した。400円ほどである。 法律家と医者が書いたものだが、論文の主体は6章をしめる法律的なもので、医学の部分は一章分にあたる。短いが、読み応えがある議論である。回復したり改善したりしない痴呆状態に陥った人間は、様々な意味で「精神的な死」であるという議論と、現在のドイツにはこのような人間にお金を使う余裕がないという議論である。第一次大戦の敗北のショックと、その後の革命騒動がもたらした巨大な不安が、ドイツの現状についての議論の背景になっている。もう一つの、回復しない痴呆という議論も、精神病院に永久にいる患者という図柄との関連で重要である。