ナチスの医師と「悪の陳腐さ」

Aly, Goetz, Peter Chroust and Christian Pross, Cleansing the Fatherland: Nazi Medicine and Racial Hygiene, translated by Belinda Cooper, foreword by Michael H. Kater (Berkeley: University of California Press, 1994). ドイツで行われてきたナチスの医学と障碍者抹殺計画の高い水準を見せつけた書物として非常に著名な書物である。読むのは初めてだが、この本はずっと以前に読んでおくべきだった。特に、ポーランドの占領地で抹殺を実施した解剖学の教授ヘルマン・フォスがつけていた日記と、ベルリンで抹殺計画にたずさわった医師でSSの高級将校であったフリードリッヒ・メネッケが家族にあてた手紙は必読である。「悪の陳腐さ」(アーレント)とはこういうことかと、胸に突き刺さるような形で実感した。