戦前の避妊と優生学について、映画『温泉芸者』について

山高しげり山高しげり著作集』全五巻(東京:学術出版会, 2007

戦前から女性運動にたずさわり、戦後に女性国会議員となった山高しげりの著作を斜め読みしてメモ。

 

避妊と優生学

安心して母体たりえるときこそ婦人は幸福感を持つが、男子偏重の家庭制度では、これを保存するために [ 意味がとれない] 機械的に妊娠、出産、分娩をする。夫人が生むことに自由意思を咥えることは夢想だも許されない。妊娠の自由の確保は、女性の権利と子供の立場の双方から。科学的な処置方法を実行に移す婦人は近来おびただしく多い。そのため、不良相談所、不良器具の取り締まりがある。現在では民族主義的な色彩、優生学的な立場が強くなり、性的放埓のために避妊を求めている女性もいるが、多くは、エレン・ケイの説いた「種族の母」としての理念を持っている。(金子しげり『婦人問題の知識』(1934), 291-4)

 

映画『温泉芸者』

山高しげりが国会議員として活動して、『温泉芸者』という映画の上映を差し止めたという記事。この映画は1963 年に売春防止法の抜け道を堂々と教えるだけでなく、主人公の芸者が「唖」のふりをして人気が出て大儲けするという差別的な筋立てであるため、上映の差し止めを女性の国会議員たちが訴えたという内容。山高は「炭鉱の不況で温泉にきて芸者になった娘が、ニセ唖になって売春し八カ月に百万円かせぎためるというバカバカしい映画ですが、聾唖者を侮辱するもにならず売春防止法の盲点を露骨に示唆するなど、どうしてこれが一般向けとして映倫を通ったのか、青少年に悪影響をおよぼす不良映画として、われわれが上映中止を要求したのは当然です」と記している。ネット上の映画DBで内容を調べてみたら、唖への優生学的な差別や、下肢の不自由への差別も含んでいた。(5巻、170-172)

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