大学院セミナー:症例誌を読む

大学院セミナーのご案内。精神医療の症例誌を読むセミナーです。3月13日・14日の朝10時から、場所は慶應日吉の来往舎・鈴木晃仁研究室(609号)になります。

 

症例誌 (case records) は、医者・看護者が診療を記録したものです。診療した患者のすべてについて、患者についての情報や診療時の状態、受けた医療やそれに対する反応などが詳細に記されています。 

 

欧米の医学史研究では比較的以前から利用することが一般的になったタイプの資料です。日本の医学史研究ではまだあまり利用されていませんが、近現代に設立された多くの病院で作成され、資料として残存していることが多いようです。

 

この研究室がお借りしているのは、戦前期の東京で最も成功した私立の精神病院である王子脳病院・小峰病院の症例誌です。全体で約数千点存在し、苗字が「あ行」と「か行」の患者については袋に一例ずつ入れて整理しました。整理はいったんここで一段落し、いよいよこの症例誌を「読む」という作業をはじめます。

 

基本は、一例ずつに洞察を働かせながら、多数の症例を組織的に読み、それを医学・思想・文化・社会と連関させるということです。個別例を読み解くセンス、集団的なパタンを読み解くセンス、より広く頭と視点を広げるセンスの三つを使う必要があります。プロの医学史研究者になりたい方はもちろん、医学史の中級 を学びたい学生諸君も、興味があるかたはメールでご連絡ください。

 

図版は焦げた症例誌です。おそらく1923年の火災の時ではないかと思います。

 

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