日本の選兵と医学(1943)

飯島茂『日本選兵史』(東京:開発者、1943

氏族制、奈良朝時代の兵農不分離時代、平安時代の過渡期、鎌倉・室町・織豊時代の武士階級、徳川時代武家世襲制を経て、明治から現代の国民皆兵制へ。

 

423-426. 明治の徴兵令に対する民衆の抗議である「血税事件」の解説と教訓。「群集心理」「民衆心理」の生成発育に注意しなければならない。徴兵と兵役に対する一人の抗議・不満が一家におよび、それが一村一郷、一郡一国におよび、水の浸透するごとく世論、風潮となる。中国でも西洋でも群集心理を把握して善導せねばならぬことを示す歴史的な事例に満ちている。これができないと富士川の戦いの平家軍になる。[花芯夫人の故事がわからない] この群集心理が悪用されるととんでもないことになり、群衆は盲信して踊らされる。スパイの脅威に対処しなければならない。大正12年の朝鮮人(原文は「〇〇人」)襲来という流言に人々が怯えたことを肝に銘じるように。

 

軍の兵役検査における身体検査の規定は、西洋から借りては邦人の上にあてはめ、その年の検査に実試してはうまくいかないことを発見するとまた改変するということを毎年行い、それを日新の学術に遅れないと称することを30年から40年行ってきた。

 

「身体の強健なるものは農漁村の青年に多く、都市生活者、富豪の子弟、官吏、学生、工人出身の青年に少ない」>これはどのような意味で「事実」なのか。高所得者が身体が虚弱だというのか。軍医たちが考えた「強健」とはどういう基準で、どう構成され、どんな伝統の中で形成されたのか。

 

大正9年の航空兵の選抜で出ている精神疾患関連。精神病の遺伝的な素因を調べる、精神病、てんかん、ヒステリー、閃輝暗点[これはなんだろう。航空だから視覚的な障害はだめということだろうか。芥川龍之介の『歯車』はこれだという説がある]の既往症があるものはだめ。ヒステリーが堂々と使われていることにも注意。心理的な検査においては、その個性に著しい異常があるものをチェックすること、

 

 

「ステトスをさかさに持てば200両、丁度にもてば只の8両」これは明治初期に石黒忠悳が小松宮(おそらく彰仁親王)に言った皮肉に富んだ滑稽譚。ステトスとは聴診器を略した語。聴診器の使い方が皆目わからない漢方医なら良い職について200両もらえるが、正しく持つ洋医は8両しかもらえないということか。