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ヒロポンについて

ヒロポンは戦後の坂口安吾などで有名だが、もともとは大日本製薬が昭和戦前期に売り出した薬品の商標で、もとはメタンフェミンの薬剤である。もともとは日本の長井長義が1888年麻黄の成分を研究中に発見した物質で、その後ながく顧みられなかったが、1935年にアメリカでベンゼドリンとして除倦覚醒剤として売り出された。1938年にドイツのテムラーがペルヴィチンとして開発し、38年から40年にかけて、優秀な覚醒剤であることが立証された。 大日本製薬が発売したのはいつかはわかっていない。他の会社では、参天堂が「ホスピタン」の名称で売り出した。以下のサイトが雑誌などからヒロポンの広告をいくつか紹介している。

http://www.warbirds.jp/heiki/42000.htm

 

ヒロポンは、Philopon であり、philo+ponos と分解できる。 ponos というのはギリシア神話の労働というより苦役のデーモンであり、それを愛するというのは、言い得て妙である。詳細は調べたことがないが、軍部は兵士に活力を与え、終夜覚せい状態に保つために利用したことや、軍需産業で無理な労働を強いられた人々にも与えられたなどと聞いている。

 

薬によって、睡眠欲求に抵抗して仕事することができるようになったり、明るい元気さを獲得できるという神話は、近現代社会にとって重要なものであり、Rabinbach, Human Motor などの研究書が詳述している。多くの薬の広告もその効能をうたってきた。ヒロポンも、その流れの一部である。

 

 

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Julie Anderson et.al., The Art of Medicine (U. of Chicago Press, 2011), 228-229 で引用されている画像。ウェルカム図書館よりDL可能。