『科学史研究』No.271 (2014)

『科学史研究』は日本科学史学会の学会誌であり、1941年に創刊された伝統ある雑誌である。2014年に出版社を変え、編集の方針などもかなり変わって、新しい体制で出発をしている。新しい体制になって3号目となる271号を受け取った。

新しい体制の『科学史研究』は、これまでの『科学史研究』と異なっていることは確かである。そこには新体制の意気込みが感じられる。その目玉であったのは、「科学史技術史の現在・過去・未来」という特集である。私も寄稿したが、その理解でいうと、編集部からの依頼原稿であり、重要な科学史研究者を中心に、それに連関する領域のさまざまな研究者が寄稿している。発想としては非常に面白い試みであるし、いくつかの優れた論考もあった。しかし、全体としてみると、実際に掲載されたのは、ジャンル、長さ、方向など、ありとあらゆる点においてバラバラな記事であった。自伝あり随筆あり論文あり評論あり、ページも1ページほどのものから、今号の最長では12ページのものまでのばらつきがあった。記事の方向もバラバラであった。新しい体制の目玉の特集なのであるから、編集サイドが明確な方針を示して、記事の方向を示すべきであったと思う。

新しい体制のもう一つの特徴は、書評の充実である。この部分は、これまでの『科学史研究』に較べて、はっきりとよくなっている。目次がないのですぐには数えられないが、20点を超える書籍が書評あるいは紹介されている。書評の依頼が難しいのはよく承知しているし、書評をする動きを日本の科学史の世界に確立したことは、とても重要だと思う。書評にかかわっているチームに敬意を表したい。その上で、書評の質の確保などの次の目標に進むために、何をするべきなのかを話し合うのがよいだろう。