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松嶋健『プシコ ナウティカ - イタリア精神医療の人類学』より

松嶋健『プシコ ナウティカ―イタリア精神医療の人類学』(京都:世界思想社、2014)

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1700字程度の書評をまとめた。イタリアの地域精神保健が持つ現代思想的なポテンシャルを、繊細かつ明晰に探究したアドボカシーの書物だと考えるのが、この本を最も有益に読む立ち位置だと思う。そう考えると、素晴らしい洞察に満ちている。私自身も、これから何度も繰り返し読むことになると思う。与えられた書評の枠組みが短かったので書けなかったが、歴史研究の視点から非常に面白かったエピソードがあった。それは、大学で生物学的な精神医学を学んできたが、実際に隔離収容型の精神病院で勤務すると、本当に診療に役立つことはあまりできず、看護人の判断で行われる拘束などに上位職として許可を与えるのが主たる仕事というような状態になる。その時に、その医者は、無益で無意味だが、学問の確実性を与えてくれるような精神医学上の操作をするという。血圧を測ったり、聴診をし、検査をし、脈をとる。そのような操作に必死でしがみつかせるような何かが、当時の精神病院にはあったという。これは、とても面白い情報だし、精神病院のある側面を説明してくれる重要なヒントだと思う。医者が行う医学的な行為の意味が、患者や看護人などがいる制度と施設全体の脈絡で決まってくるという方向である。メモしておく。