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パヴロフと精神医学

パヴロフ『パヴロフ選集』東大ソ医研訳、上・下巻(東京:合同出版社、1962)

1949年にパヴロフの誕生100周年を記念してソ連で刊行されたパヴロフ選集の全訳に、パヴロフの思想の発展と将来性についてのソ連の論文を2点翻訳し、日本の大学の生理学教室から刊行されたパヴロフと条件反射に関連する論文の文献リストも加えられている。もともとは1955年に蒼樹社なる書店から翻訳が刊行されたが絶版になっていたものを再版したものである。

 

内容としては、パヴロフの業績を年代順に追って、循環、栄養についての初期の業績、ノーベル賞をとった消化の生理学、そして条件反射についての三つの領域についての論文を翻訳している。条件反射についての部分で、人間の精神医学と心理学について、条件反射の生理学を用いて考察を加えた、記述の量も多く、その是非は別として質が高い考察をしている。精神医学を還元主義的な生理学者が考えるとどうなるのか、一つの範例として読んでみた。

 

疾病としては当時の言葉でいう分裂病と、ヒステリー・神経衰弱に分類される神経症。精神病医としては、著名なところはだいたい批判的に読んでいるが、よく名前が出るのは神経症やヒステリーに関してピエール・ジャネで、ジャネには公開質問状なるものまで書いている。あと目についたところではクレッチマーもよく引用されているが、その性格論はぼろくそに批判されている。もっと丁寧に読み、実際の歴史上の事例と突き合わせて考えなければならないが、発想の基本は機能への分解と還元主義である。精神疾患の症状を、感覚、知覚、運動などの機能に分解したうえで、それぞれの機能の障害の複合体として疾病をとらえる。そのうえで、それぞれの機能の障害を持つイヌなどの事例とつきあわせて、その障害を含む精神疾患の実態を明らかにするということが基本である。ただ、これだけではよくわからないので、やはり実際に生理学者が精神病患者を診察し研究するときに、何が起きるかと見なければならないだろう。