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動物の実験的神経症―1950年近辺の日本

将来の研究主題のひとつで、動物の精神疾患について歴史的な考察をしてみたいと思いついて、実験動物を「精神疾患」にするという主題の論文を読んでみた。この場合の疾患は「神経症」である。

 

精神疾患を研究する手法の一つに、動物に実験的な操作を行って、人間であれば精神疾患と考えられるものにするという手法がある。動物を精神疾患にすることができれば、実際の患者や人間には許されていない、さまざまな介入の手法を用いることができる。この論文が用いている、大脳皮質を切除するだとか、ホルモンを大量に与えるということも、人間の患者では原則的に不可能であるが、精神疾患にかかった動物であれば、自由に行うことができる。

 

問題は、動物が示すある行動が、どういう意味において人間の精神疾患に対応する病気なのかを確定することである。理論的には、パブロフであり、W.B. キャノン、そして戦後にはハンス・セリエが大きな役割を担う主題である。

 

もう一つの問題は、「神経症」に追い込むために、不快な刺激を動物の精神に与え続けるという、動物の権利と直接的に接触する操作が実験の本質的な部分になること。この論文も、動物(マウス)を暗室に閉じ込めて一方の足に通電刺激を与え続けて情緒や行動の不安定に追い込むという手法が中核を占める。大脳皮質切除や脳波を計測するための電極挿入といった手法も、現在の動物の権利を唱える団体が、科学実験に名を借りた動物の虐待としてしばしばしば用いられる行為である。

  • 河村洋二郎「実験的神経症に関する研究 第1編 行動変化の経過について」精神神経学雑誌 53(3), 124-134, 1951-10.
  • 河村洋二郎「実験的神経症に関する研究 第2 編 時間的反射法による行動変化」大阪大学医学雑誌、3(6), 1951, 473-478.
  • 河村洋二郎「実験的神経症に関する研究 第3 編 大脳皮質切除と神経症行動型」大阪大学医学雑誌4(1), 1952, 47-53.
  • 河村洋二郎「実験的神経症に関する研究 第4 編 副腎と神経症行動の発展」大阪大学医学雑誌4(1), 1952, 55-60.
  • 河村洋二郎「実験的神経症に関する研究 第5 編 脳波的研究」精神神経学雑誌 53(3), 134-139, 1951-10.