英語のディスカッション能力について

昨日の記事の続き。大学院生などの若い研究者に英語の報告をさせる仕掛けについては、おおよそのことが分かった。毎週英語を書く仕掛けと、学期末か年度末に英語のワークショップをすることである。その部分はだいたいわかった。

 

一方で、英語でディスカッションをしたりQ&Aをする能力が低いことが露呈した。英語でいいペーパーを読めた学生についても、Q&Aの能力は低い。これをどうするか。

 

語学教育で個人的な経験を語ると、語学教育のプロに叱られるが、ここでは私の個人的な経験を書かせてもらう。私も、イギリス留学中に、英語で報告を書く能力が、ディスカッションの能力に先行して上達する形をとった。まず書くのがうまくなり、そのあとにディスカッションする能力が上達した。書く力の上達は、博士論文の章や、大学・研究所内での若手セミナーのための原稿を書いては、ポーター先生や友人たちに指導されていたからである。これは簡単で、この仕組みを学生に伝えるコツはわかっている。

 

問題は、英語のディスカッションの能力である。私の英語のディスカッションの能力については、もちろん留学当初は質問も回答も何もできなかったし、たまに質問すると貧困な内容を意味不明な英語で言うことしかできなかったが、今のディスカッションの能力については、多少の自負を持っている。その上達の理由は、一つは英語のセミナーなどで繰り返し出て練習する機会があったからである。おそらく、緊張しないで上達する仕組みが大切なのだろう。ウェルカム医学史研究所では、Work in Progress という、院生やPDがペーパーを読んでディスカッションするための仕組みがあって、私もそこで何度もペーパーを読んだ。ここには、研究所の教員側も出ていたため、教師が学生を評価する場になっていて学生の自由な議論がなくなっているという批判のもと、教師の参加を禁じて学生と若手PDだけで始められたのが、Friday Morning というセミナーのシリーズだった。私もそこでよくペーパーを読んだし、一年ほどは、そのオーガナイザーもしていた。そこで一緒に仕事をした人たちは、今でも親密な友人である。私の友人の形成はどうでもよくて(笑)、大切なのは、学生とPDくらいで、緊張しない文脈で質問と回答を練習できることだろう。

 

もう一つは、Q&Aが上手な先生たちの真似をするということである。私の学生時代には、研究所の先生たちの質問が、本当に上手だった。性格も違い、学風も違い、それぞれタイプが異なっていたが、報告についての議論がこれから盛り上がっていく質問をするのが、誰もが上手だった。私だけでなく、多くの学生が、先生たちの質問の精神を汲み取ろうとしてきた。裏返すと、学生に真似されるようなQ&Aをしなければならないということである。ううむ(笑)

 

以上、大学院の授業の仕掛けで、学生とPDの英語能力を高めることについて、何かの参考になれば。