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医学史の方法論―「医療にネイティヴな能力」

Löwy, Ilana, Between Bench and Bedsides: Science, Healing, and Interleukin-2 in a Cancer Ward (Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 1996).

 

レーウィの重要な著書。イントロダクションだけ読む。

 

レーウィは現代医学史の研究者で、その仕事は内容が優れているだけでなく、方向性についても新しい方向を示唆してきた。もともと免疫学の研究者であり、医学系の学問を学んだ背景を、新しい方向の医学史研究に生かす方法論の開拓をしてきた。30年から40年ほど前に欧米で医学史研究が進展した大きな駆動力は、それ以前の医学史の基本フォーマットであった、医学を学んだ学者が歴史を研究するという医学系の学問が息切れしていた時期に、人文社会系の研究者がそれと交替する視点を提起することであった。その流れの中で、それまでの医学的な視点にかわって、歴史学とその隣接領域の視角と方法論と規準が、医学と医療の問題を分析し議論するのに用いられた。この方法は欧米で大きな成果を収めて、現在でも主流である。

 

Lowy らがそれを補う形での新しい医学史の方法論の意識を発展させた。それは、人文社会系の研究者の弱点を補強し、文系医学史では無視される傾向が強かった方向の方法論を編み出すことにあった。より具体的には、医療の現場を外側から観察するのか、その中に入って内側からの理解を目指すのかという方向である。前者を participant comprehension と呼び、その現場に参加するが、それは外側からの理解にとどまっているという。もちろん、外側からだけ見えることもあり、それを分析する方法論を文系の研究者が持っていることは高く評価する一方で、内側から分析する能力とスキル、彼女が native competence と呼ぶ能力も重要である。大きな枠組みで言うと、医学史に医学系・理系の研究者たちが「帰ってきて」重要な仕事をしているが、その一つの方法論上の核を提供している。内からの理解に基づいた医学史であり、この方法は人類学の方法とも共通する部分があるのだろう。

 

内容はまだ読んでいないが、現代のフランスの病院における治療薬の開発である。そこで、独立して意識を持った個人としての患者と、生物学の一般的な法則に従う「医学化された身体」との対立を描くとのこと。