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肺活量計と人種差別

Braun, Lucy, “Spirometry, Measurement, and Race in the Nineteenth Century”, Journal of the History of Medicine and Allied Sciences, vol.60, number 2, 2005: 135-169.

 

肺活量計は19世紀の初頭に開発された医療機器である。イギリスで診療に用いられたほか、兵士の肺活量が測定されて健康な兵士と虚弱な兵士を区別したり、あるいは結核に罹患している兵士などを探し出すのに用いられた。この手法がアメリカにわたり、イギリスと同様に軍が兵士の肺活量を測定することが行われたが、そこでは、ヨーロッパ系アメリカ人とアフリカ系アメリカ人の肺活量の違いを実証し、その測定データに基づいて人種差別の思想が組み立てられた。統計と身体測定が、科学的な装置であると同時に文化的・社会的・政治的な脈絡にも積極的に用いられたこと。

Benjamin Apthorp Gouldは、もとは天文学を学んで数字の扱いに長けており、1869年にアメリカ兵の身体測定の統計学的な分析の書物を出版したが、その中でアフリカ系アメリカ人の肺活量がはっきりと小さいことを論じた。1890年代には、Frederick L. Hoffmann が、この議論をダーウィンの進化論の枠組みの中にいて、奴隷解放されたアフリカ系の人々が衰退して不健康になり絶滅に向かっていることを論じた。