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19世紀の生理学と「扇情小説」について

Kennedy, Meagan, “Some Body’s Story: The Novel as Instrument”, Novel: A forum on Fiction, 42:3 (2009), 451-459.

 

イギリスで1860年代から流行した「センセーション小説」と同時代の医学、特に実験室で現れた生理学との関係についての的確な分析を読んだのでメモ。 “the route from page to nerve was direct…  Readers experienced a direct physiological response to the stimuli – the “sensation incidents” in the text. 

 

19世紀の後半、特に1860年代には、ヨーロッパの医学、特にその生理学は、身体が経験したことを記録することを新たな課題として重視し、そのための装置の発明が相次いだ。1859年にはEtienne-Jules Mareyが脈波記録装置を発明し、装置に取り付けられた筆記針が脈派を記録する仕組みを作り出した。この装置と同じ発想のいくつかの装置が開発されたが、これらは身体内部に隠された情報を取り出して記録するものであるとまとめられる。「隠された」というのは、ある個人と通常の人間の感覚を用いて接するときには感じ取られない情報であるが、それを身体から取り出すことができるという意味である。この装置を通じて、身体の中の現象―より具体的には神経と感覚に関する情報を読み取り記録することができるようになった。さらには、もともとは聴覚に与えられる脈の音や触覚に与えられる触感など、脈に関する時間的に限定された情報を、筆記針が描いたグラフという固定された形で記録・保存して、いつでも参照して他人にもそれを見せることができるようになった。これは、身体の情報を、いったんその情報とは違うものにして記録し、その情報から再びもともとの身体を理解できるようにするという二段階のメカニズムであり、前者を「脱身体化」と呼び、後者を「再身体化」と呼ぶことができるだろう。脈波記録計は、身体の情報を変換・記録・再構成する装置であったのである。

 

センセーション小説がおこなったのも同じである。その小説は、感覚ではなく、ある意味で「脈を読もう」とする文学的な仕掛けであった。(この部分は略す)。

 

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