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第一次大戦期フランスにおける電気治療の是非をめぐる論争

Roudebush, M. (2000). "A Patient Fights Back: Neurology in the Court of Public Opinion in France during the First World War." Journal of Contemporary History 35(1): 29-38.

 

第一次大戦で負傷したフランス兵が治療を試みた医師を殴った事件の裁判を分析した論文。1914年に塹壕に落ちて負傷した兵士バプティストデシャンは、本人は除隊されると期待していたが、病院から病院に次々と送られて、医官であるクロヴィス・ヴァンサンが勤務するツールの医療センターに送られた。そこでデシャンは電気ショックの治療を行おうとしたヴァンサンに怒ってパンチをくらわせた。これは軍律でいうと、上官に不服従で暴力をふるったことになり、デシャンは裁判にかけられた。しかし、この裁判の様子が報道されると、ジャーナリストたちの意見は大きく割れて、デシャンに好意的なものとヴァンサンに好意的なものに分かれ、それぞれが異なったレトリックを使った。実直で誇りを重んじる兵士か、良心的な医師か、あるいは臆病者なのか、軍規を悪用する医者なのか。はたしてデシャンは兵士なのか、それとも患者として治療を選ぶ権利があるのかどうか。証言をしたある医師は、「告発されなければならないのは医師のヴァンサンのほうだ」と述べた。(これは激しい批判を引き起こし、さすがに後に証言者は言い過ぎだったと認めた)最終的には、世論を味方につけて、本来は死刑になってもおかしくない行為であったが、デシャンは厳罰には処されず、猶予つきの6か月の投獄となった。