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19世紀の医療は女性の主体性と自己を作り上げたか

Theriot, N. M. (2001). "Negotiating illness: doctors, patients, and families in the nineteenth century." J Hist Behav Sci 37(4): 349-368.

 

著者は19世紀を中心にして女性と医学の関係について深い洞察を持つ論文を出版している学者で、彼女の議論はいつでも読むのを楽しみにしている。この論文は、具体的な史実の記述よりも、19世紀の女性の身体と自己意識にとって、医者との接触がどのような役割を果たしたのかを理論的に考察したものである。バーバラ・ドゥーデンの『女の皮膚の下』において、18世紀の女性は身体と自己と世界が一体化したもの corporeal selves を持っており、個人が個々の身体を持ついう形での近代的な自己と身体の世界に住んでいなかったという問題提起に対応した論文でもある。すなわち、19世紀の医療においては、より身体の内部と具体的なありさまが医者と患者の双方によってイメージされ、患者の身体とより密に接触する医学に変化したため、女性たちは<医学的に管理できる身体を持っている>と自らをとらえるようになり、それと同時に、女性が家族との関係の中で定義される存在とは異なった、特別の自己と主体を持つものとして自らをとらえるようになったという。テイラーの言葉を使うと、これは、他者を志向するのではなく、自己を志向する自意識であり、ニコラス・ローズの言葉を使うと、近現代の、自己に焦点を置いた主体性が、「自己のテクニック」とともに現れたことでもあるという。病人であること、そして19世紀に大きく変化した医療を経験することによって、近現代の自己の枠組みを女性が持つようになったという議論である。