杉浦日向子『百物語』の瘴気と瘧について

お昼を食べた後のパワーナップ(笑)で、杉浦日向子さんの漫画である『百物語』をめくっていた。江戸時代に設定されたとても良い感じの妖怪譚・<あやかしの物語>であり、何気ない生活の中の不気味な魑魅魍魎たちが、禁欲的にシンプルな描画で表現されている。人々の評価も非常に高いらしい。

その「其ノ九」に「雨中の奇物の話」というタイトルで、疾病が具象化したことに題材を取った話がある。秋の暮れ方に根津の薬種屋が手代とともに商用の帰り、赤坂あたりで行き来も絶える大雨になった。二人が道を急ぐ中、大雨の中に壁の前にうずくまっている女のようなものがいる。合羽ようのものを着て、笠の類もなく、たしかに女とも見えない。近くに行ってよく目を凝らすと、そのものはふと消えてしまう。「散りてあとかたなし」。その翌日から薬種屋と手代は瘧(おこり)を煩い、二十日ほど悩みしと。「さては瘴癘(熱病)の気の雨中に形容をなしたるならん」という作品である。

話としては、大雨の中、瘴癘の気が、雨の中でまるで道にうずくまった女のような具象化をして、それをみて近寄った人間がその病にかかったという筋立てである。ここには瘴気がいつもは気であるが、何か別の形をとることもできるというポイントもあるし、そうなった時に近くによるとその病気に感染するかのように罹るというポイントもある。病としては、瘴気といい瘧といい、マラリアと関係があることも確かである。何が大事か分からないが、この話は、ちょっと原作を読んでおきたい。

 

・・・ところが、実はこの漫画の原作が少しわかりにくいらしい。もしかしたらオリジナルの作品ではないかという可能性もあるらしい。何を調べたら分かるのかしら?