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アンジェラ・カーター(1940-1992)

Perrault, Charles, and Angela Carter. The Fairy Tales of Charles Perrault. [New] ed. / introduction by Jack Zipes. ed. London: Penguin, 2008.
 
 
アンジェラ・カーター(1940-1992) は20世紀後半のイギリスで活躍した作家。魔術的リアリズムフェミニズムの文脈で語られる。1960年代ごろの日本に滞在して、日本の生活と人々を素材にした短編を読んで、違和感と共感が混じったとても不思議な面白さを感じた。別の作品ということで、17世紀末に刊行されたペローの童話集に収められている作品や、他のペローの作品からいくつかを選んだ童話集を読んでみた。全体で100ページ足らずの薄い本である。作品としては、赤ずきん青髭、長靴をはいた猫、眠り姫、シンデレラのような超有名作品が多いが、「ロバの皮」「髪房のリッチー」など、私が初めて読んだ作品も取られていた。
 
素晴らしい仕事だった。英語にしたときの、きびきびとした簡潔な文体、どことなく斜に構えた構成、皮肉が込められた「教訓」など、カーターの複雑な個性を反映している。同じ魔術的リアリズムの作家とされるイタロ・カルヴィーノの『イタリア民話集』も、同じように民話を通じて個性的なメッセージを伝える作品であり、それと似た部分もあるが、異なった性格もある。カルヴィーノの作品は民衆の側のという力点が時に予想される仕方で現れてくるが、カーターの複雑な皮肉さを込めた語りなおしの方が面白かった。
 
もう一つ、ルネサンス以降に流行した医学的な主題である「恋愛の狂気」との関係である。これは「ロバの皮」という作品でもっとも直截に出てくる主題だが、よく考えたら、ペローの他の作品や同時期の民話に頻出する話題である。「ロバの皮」では、身分違いの恋と醜い物への恋が混じりあっている。話の筋書きは、本当はきれいなお姫様だが、身分を隠すために農家の納屋に住んで雑役をしており、ロバの皮を身にまとってブスだと思われている女性がいて、事情を知らない王子様がその女に惚れこむことになっている。それを王子様の母親に言うと、おつきの医師たちが出てきて、これは恋の狂気であり間違った欲情であるというような医学的なことをいう。言われてみたら、同じようなみかけ上は身分違いの恋(シンデレラ)、種類違いの恋(カエルの王子と人間のお姫様の関係)、たいへんな醜さを持った男や女への恋など、恋愛の狂気の主題は、民話に非常に多い。家にあったロバート・バートン『メランコリーの解剖』やジャック・フェランの『恋愛の疾病についての論考』などにも、たしかにこの主題と連接する部分がある。ことに、フェランの著作の解説に描かれているように、この恋愛の狂気にはオカルトな原因があると考えられていた。隠された影響による疾病である「異様で異常な愛」という主題を感じた著作だった。ちなみに、フェランの著作は以下の通り。
 
Ferrand, Jacques, Donald A. Beecher, and Massimo Ciavolella. A Treatise on Lovesickness. 1st ed. ed. Syracuse, N.Y.: Syracuse University Press, 1990.