西丸四方 フロイトとDSMと分裂病

西丸四方. 彷徨記 : 狂気を担って. 批評社, 1991.
 
西丸四方は1910年生で2002年没。著名な精神病医であり、一族と先祖には精神医学者と小説家と精神病患者がぞろぞろいる、面白い一族である。祖父が島崎藤村、曾祖父は島崎正樹で藤村の『夜明け前』の主人公で最後に発狂して私宅監置にあたる処置をされる。その人物が素晴らしい自伝を『彷徨記』として書いている。1976年に初版、1991年に少し改訂したものが多少タイトルを変えて出ている。この書物に、1930年代くらいの東京の松沢病院での病床日誌の記録の仕方について少し書いてあるので、それをまとめていた。でも、色々な部分で大声で笑いだしてしまう記述が多い本である。西丸によると、東大教授の三宅は口がうまいが早口で意想奔逸的でよく理解できず、スライドにあたる幻燈を見せてくれるのだけれども、これも速すぎて奔逸で何が何だか分からなかったとのこと。それに対して次の教授となる内村祐之は頭がよくていうことがよく分かったという。
 
それから、西丸は精神分析が大嫌いである。何かの間違いでユングを訳したけれども、精神分析は本気で危険だと思っていたらしい。ヒヤヒヤ(笑) 2つほど引用しておく。 
 
精神分析には本気で近づかないほうがいい気がしており、アメリカの精神科の医者は、みな頭がおかしいのではないかと思ったりした」 167
「[初期の] DSMなど見ていても、ややこしくて、作った人は頭が分裂しているのではないかと思ってしまう」175