ダッハウ強制収容所の医療人体実験の描写

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ナチス・ドイツ強制収容所で、医師たちによる凄惨な人体実験が行われたことで悪名が高いダッハウ強制収容所。そこに収容されていたゲオルグ・タウバー (Georg Tauber) が、絵が結構上手で、SSの将校に見込まれて収容所内の様子を記述するために雇用されていた。彼が描いた作品などが、現在、ダッハウ強制収容所跡で開催されているとのこと。
 
タウバーは軽度の精神疾患、万引き、貨幣の偽造を行ってはモルヒネ中毒にかかっていた人物で、優生学的な理由でナチスによって粛清されるべくダッハウに収容されていた。当時のダッハウでは、SSの医療官たちが、被収容者を用いて、軍事医療を目的とした人体実験を始めており、彼らの命令でタウバーはその実験などを描写することになった。その引き換えに、被収容者に与えられた負荷が少し軽くなったからである。冷水に長時間浸して生命が脅かされる温度や時間を測定するなどの実験が描写されている。
 
ナチズムと強制収容所における人体実験は、私がまだ勉強していない主題であり、英語で読めるきちんとした本も、買ってはあるけどまだ読んでいない。その段階での感想を言うと、731部隊の実験に較べたときに、戦略的にも研究組織の側面でも、ナチズムの人体実験の側が素人っぽいという印象を持っている。731部隊に関するさまざまな研究書を読むと、戦略的に高度な段階である生物兵器を本気で開発しているし、それにふさわしい組織化された人体実験を行っていることがわかる。それに比べて、ナチズムの人体実験は、散発的で思いつき的な要素があるという印象を持っている。近現代の日本の医療を考えるときに、欧米を模倣した部分と、その方式を取らなかった部分があって、731部隊は後者なのだろうか、アメリカ軍が非倫理的なことをしてもその成果を独占したかったのも当然なのだろうかなどと考えている。
 

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これがサイトに公開されている冷水実験をタウバーが描いたもの。もちろん残虐だし絵に描いたようなナチズムの暴虐さを顕している。でも、どこか素人っぽい人体実験だと感じるのは私だけだろうか?