18世紀ロンドンの外科医・解剖学・人骨

 
 
ロンドンで仕事をして日曜日には観光地に行って感心している実佳から初めて聞いた、18世紀のロンドンの外科医で解剖学を教えていた Willaim Hewson が用いた人骨の発見と分析のお話し。ちょっと調べたら素晴らしい話で、簡単な報告の論文を読んでメモ。ちなみに、Wikipedia の International Archaeology の巻号が間違っていて、下のものが正しい。そのままPDFをDLできるし、いい写真もあるので、ぜひお読みください。
 
1998年にロンドンの Benjamin Franklin House を建て替えたりしているときに、地下から人骨、動物の骨、水銀が出てきた。さらに、陶器、ガラス、金蔵なども出てきた。人骨がまとまって出てきたから、何か犯罪があったのではないかという疑いもあり、なんといってもベンジャミン・フランクリンが住んでいた家だから、大きな話題にもなったらしい。ただ、そこで外科医の William Hewson が医学校を開いていたこと、彼が解剖学でリンパ腺に関して重要な発見をしていることなどから、ヒューソンが死体を用いて行った実験で用いられた人骨だろうということになった。
 
人骨や動物の骨、そして水銀などを調べた結果、これらの埋蔵品が、ヒューソンの重要な研究をかなり再現していることがわかった。なんといっても、考古学の発掘現場で、液体の水銀が流れているのは、考古学者たちにとってもスリリングな経験だったらしい。この部分、今は調べている時間がないけれども、水銀を用いてリンパ腺の構造か何かを特定する研究を、人間と動物を用いて行っていたことが確定できたとのこと。他の博物館にもあるヒューソンの業績とも重なっており、素晴らしい発見となった。
 
一方、この論文では必ずしも強調はされていないが、この人骨は医学の発展の影の部分の象徴である。ヒューソンが用いた人間の死体は、ロンドンの墓から業者によって盗まれて供給されたものである。この業者をリサレクショニストという。墓を暴いて人骨を盗むことは、もちろん非合法であり、非合法な業者との結びつきに、医学の進歩が依存していた。また、論文を見ればわかるように、その死体の頭蓋骨に円形の穴がいくつもあけられていたありさまは、「ううううむ」である。
 
しかし、いい側面で話を終わろう。この研究は、医療の施設に、考古学者、解剖学者、医学史研究者たちが関与して、素晴らしい洞察をもたらしている。このような業績がもたらされることが、医療の発展であり、歴史の発展であり、文化の発展であると私は思っているし、イギリスやアメリカ、そしてヨーロッパの国ではそのように思われている。日本のあるお医者さまが「なぜ歴史学者が医学の資料を見るの?何の意味があるのかわかんない」とおっしゃっているとのこと。こういう意味があるのです。