大英博物館・スキタイ展

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大英博物館の会員誌が来た。9月14日からスキタイ人(スキティア人)の文化についての大きな展示があるとのこと。素晴らしい企画で、思わず見惚れてしまう。これと関連して、11月から「神々と生きること」という企画が始まる。世界各地のさまざまな人々の宗教のありさまを問い直すもので、宗教に端を発するテロリズムの中で混迷している世界に大英博物館が出すメッセージである。この企画は、先代の大英博物館の館長だったニール・マクレガー先生が監督していると知人に聞いたことがある。これも、大英博物館がふんだんに所蔵している品物やデータを駆使したものになるのかと思うと、BBC Radio 4 で提供される連続ラジオ番組であるとのこと。この大英博物館が提供する連続ラジオ番組の底力は、すでに知っている。

スキタイ人は、紀元前の時代に黒海からシベリアにかけての広大な地域で活躍した騎馬民族である。しかし、写真を見ればわかるように、今回展示される遺跡や遺物は、非常にクオリティが高い。それも、物理的な損傷や化学的な劣化が感じられないものである。この理由は、遺物がシベリアの永久凍土で2000年間にわたって凍り付けの状態にあったので劣化が小さいからだという。素晴らしいのか、地球の気候システムが大きく変化していることなのか、そこはよく分からない。

この議論は、実はいま書いている論文と少し連関している。スキタイ文化の遺跡の保存は、自然界のそれぞれの場所が持つ性質と、その時系列上の変化を組み合わせて理解するものである。世界を場所と時間で分けたうえで、その関係性を読み解くものである。保菌者の問題は、この発想を用いる。もちろん中心となるのはヒト・動物・菌の間に成立するニッチな関係であるが、それがどのように他のトポスと関係するのか、そしてその関係性が時間によってどう変わるのか、そのようなトポスから構成される世界はどのようなものかを考察する背景を持っている。もう一つ、保菌者の問題で重要なことは、それが実際に患者が存在することも重要であるが、その研究のかなりの部分を実験室で、動物や実験器具や菌や体液などで作り上げる仮説上のエコロジカルな空間も重要である。とりあえずメモしておいた。