香港のバイオテック産業のSTS

Luk, Christine Y. L. . "Biotech in Hong Kong: How Biologist-Entrepreneurs Pursued Hong Kong's Bioscience Dream." EASTS 10, no. 3 (2016): 291-313.

 

現代の香港のバイオテック産業を分析した STS の論文。STSというのは、Science and Technology Studiesの略語である。これは印象の上での発言なのだけれども、医学の「歴史」の学者である私から見ると、History という単語を用いるには新しすぎる現代の事例を分析した論文が多い。この論文は、台湾や韓国やシンガポールバイオテック産業のように、これまでSTS の分析対象となってこなかった香港のバイオテック産業に関する初めての論文であるとのこと。


重要なポイントは、香港の政治的な複雑性を反映したバイオテック産業の位置づけがされているとのこと。植民地時代の香港のバイオテック産業自体がこれまで低調であったが、中国との合併の後、遺伝子組み換えに基づくがんの薬が開発され、サイエンスなどの一流誌でもキャンペーンされている。そのときに、香港の政治の複雑性を反映した位置づけがされている。これは、中国のバイオテックの発展としてではなく、「香港生まれの」という意味の「港産」とされているとのこと。そのことは、香港の歴史的な経緯を反映してバイオテックが位置づけられている。しかし、その一方で、もちろん中国の市場なども非常に重要である。