Josiffe, Christopher. Gef! The Strange Tale of an Extra-Special Talking Mongoose. London: Strange Attractor Press, 2017.
2017年にロンドンとMIT 出版局から刊行された書物。1930年代からイギリスのマン島の孤立した屋敷に引っ越してきた夫婦と若い娘が、自分の家におかしな動物が出るようになったと主張した事実が主題になる。そのおかしな生き物は、話をすることができるマングースであり、自分から名前は「ジェフ」であると名乗る。この事例を把握させるために、ロンドンから心霊学の専門家や色々な人々を呼んで、ジェフを観察させるが、なかなか観察機会がうまく確保できない。そうこうしている間に、アフリカからの民族宗教であるヴードゥーの術師がロンドンに来て興味を示したりする。一方で、ジェフはインドやエジプトから来た宗教思想を語っている。20世紀に世界の各地の植民地の知識がやってくる。一方で、イギリスのマン島も、地方としては僻地であり、マンクス語という方言を持っている。そこが不思議な力を持つ動物が力をもつ昔話もあり、そこにロマン主義的な思いの色も重ねられる。当時の世界とイギリスの文化が複雑な構造を持って、その中で家族、隣人、専門家、心霊術者、外国人を引きつける多様な行動を行うようになった。
色々な関心事があるので、読みたい人は自分が好きな主題の記述を拾い上げるであろう。イギリスの歴史学者が、ロンドン大学とケンブリッジ大学の資料を一つの出発点に、長い迷信や魔術に関する資料がもう一つの出発点になり、素晴らしい記述になっている。その中で、家族の父、母、娘が、どのような世界を作ろうとしたかが、重要なフレームワークである。ドメスティックなフレームワークに付加されるのに、近隣の人は見受けられていない。家族が住んだのは、もともとは立派なやしきだったのだろうが、当時は壊れそうな状況で、孤立した地域で農業を何かしら行っていた。そして、ロンドンや世界で活躍する人々が重要である。
ジェフの写真はほとんど残っていない。毛を送って検査を依頼された科学者は、マングースやイタチの獣毛ではなく、イヌの獣毛だと科学的に正しいことを書いている。その獣毛も現在は保存されている。
「人間の言語を話すマングースがいるなんて、そんなバカなデタラメを言うわけないだろう」という夫の言葉。悪人列伝の19世紀のロンドンで作られたそんな馬鹿げた仕掛けは意味ないでしょう、と言うセリフと通じている。