現代の中国の医療に関する統計について

Reinarz, Jonathan, and Rebecca Wynter. Complaints, Controversies and Grievances in Medicine : Historical and Social Science Perspectives. Routledge Studies in the Sociology of Health and Illness. Routledge, 2015.

 

Jonathan Reinarz 先生はバーミンガム大学の医学史の先生。バーミンガムの教育病院に関する優れた著作を書き、大きな研究拠点を作っているだけでなく、大学の国際行政の主役の一人として活躍しておられる。また、奥様の研究との関係で、日本の広島に数か月滞在して、そこでも研究の拠点を作られている。近現代の医療と社会政策関連を主題にして多くの書物を編集されているので、ご覧になるといい。

この書物は医療に対する苦情の歴史と現代の問題である。主たるターゲットはイギリスである。冒頭で、現代中国における医師への苦情の大きさを論じるのに、その数を引用する手法が取られている。2010年には中国で17, 000 件の医師が、患者から傷害を受けた、これは医療の高価な部分が増えてきているからというような統計と議論である。この数字はもちろん大きな数字で、中国の医療に関するある種のイメージを、それも複数にわたって導きやすい。

しかし、日本や他の国と対比して考えるときには、対比する数字を持たなければならない。まず中国の人口の大きさを考えなければならない。日本の人口で考えたとき、一年に1700件の患者による医師の傷害事件というのは、それほど不思議ではない。

ただ、それに関するデータが日本にあるのかどうかを知らない。歴史的にも、きちんとした数字は私の記憶には出てこない。昭和戦前期の精神医療でいうと、精神医療だけに区切っても、一年に1700件の患者による医療者の傷害の試みがあったことは全く驚かないし、それと同じくらいの件数の、医療者が患者を傷害する試みがあったとしても全く驚かない(笑)

話を戻すと、患者による医療者を傷害した事件などは、日本ではどのくらいあるでしょうか?