クレティンの語源はクリスチャンであるという説

blog.oxforddictionaries.com

 

オクスフォードのウェブ上の英語辞典の今週のコーナーのクレティニズムの説明がものすごく面白い。ジェンダーの話、トランプの nationalist の話、ロシアや中国の金満家の話なども面白いが、クレティニズムの話にはかなわない。

クレティニズムというのは現在でも比較的多く存在する疾病である。新生児甲状腺機能低下症と訳し、クレチン症とも言う。日本では、20世紀の後半からの新生児のスクリーニングをはじめ、およそ3000人に1人の割合で存在した。新生児の段階で発見して、甲状腺機能を補う治療を行うとよく効くとのこと。発展途上国などでは新生児の段階での発見ができないから、かなりの患者が存在してしまう。Wikipediaの項目の世界地図を見ると、アフリカと地中海世界が非常に高い。

このクレティンという語は18世紀にフランスで現れた。もともとスイスでよく発見され、スイスの言葉がフランスで使われ、そこから各国にわたった。問題は「クレティン」という語の意味である。これはキリスト教徒という意味の Christian で、神が作った人間であり、動物とは対比される。すると、クレティンのようなかなり重篤な先天性の障害を持つ患者でも、動物ではなく人間であるという意味になる。「人間だから」という説明は、差別的な説明にもなるだろうし、美しい説明にもなるのだろう。それ以外にも語源の説明があり、チョークを意味する creta と顔色の類似だとか、被造物を意味するとか、あるいはそんな患者が現れそうな土の状態を意味するなどがあるとのこと。