下田次郎『胎教』

下田次郎. 胎教. 増訂 edition, 實業之日本社, 1923.
 
下田次郎という東京女子高等師範学校の教授のヒット作の一つが『胎教』である。1913年に書かれ、1923年には増補改版されている。下田次郎は東大の文学部哲学科で教育学を学び、イギリス、アメリカ、ドイツに留学して、帰国してから女子の性について論文を提出して博士号を得た。東京女子高等師範学校で長く教えて、多くのベストセラーを書いている。
 
『胎教』を読むと不思議な感じがする。下田が多くの分野に関して色々と知っていることは、たしかにその通りである。その多くの分野は本当に多様であり、受精に関する生理学の話と、中国医学の養生論の話と、仏教やキリスト教の聖母の話と、トマス・ハーディーの短編小説の話と、アメリカの社会調査で得た母親になった経験などなどが並ぶ。西洋医学漢方医学、宗教、文学、社会学などの話である。医者に対する態度も、面白い態度である。妊婦や母親になったときには医者の言うことを聞いて従いなさいといいながら、医者はどうせ10分くらい見るだけだから、患者の子供に対して見落としも多くて、親のほうがよく知っていることもあるということを付け足す。