『文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション 呪』

Hearn, Lafcadio et al. 呪. 汐文社, 2017. 文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション / 東雅夫編.
 
東雅夫さんの怪談や奇譚などを集めて注釈をつけるお仕事には、いつでもとても頼りになっている。今回は、子供向けと称して5冊本が刊行された。すべての漢字にルビが付され、何期な言葉や言い回しには詳しい注釈と鑑賞の手引きが施されている。文豪たちが書き記した文章を、年少の読者でも、そのままの形で味読できるようにと工夫されている。私はおバカさんだから、注釈からも非常に多くを学んでいるし、作品の選択からも多くを学んでいる。
 
この注釈というのは、実は見たことがないものである。見開きにしたときの左側に、小さな活字の注釈が集中した部分がある仕組みである。英語の本の本文と脚注が、1ページで上下に並んているのに対し、見開き2ページで横並びになった感じである。これが、非常にいい。岩波の古典大系の古い版は頭注という形式で、これまではそれに慣れていた。しかし、言われてみたら、本文に対する注釈が上についているより左側にまとめられている方がいいのかもしれない。
 
ここに久夫十蘭(ひさお じゅうらん)という作家の「予言」という短編が採られている。とても恥ずかしいのですが、名前を聴いたことがなく、きちんと読んだことがなかった作家です。もちろん非常な傑作です。「予言」は1947年に刊行されており、催眠術を素材にした呪いの物語。これとよく似た中編が「妖術」というタイトルで1938年に公開されているとのこと。「妖術」のほうを読んでみよう。それから、小松左京の「くだんのはは」、三島由紀夫の「復讐」など、いずれもとても面白かったです。これは「呪」だが、「夢」「恋」「霊」「獣」という別の巻も注釈から大いに学びながら読んでしまおう。
 

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表紙も子供向けの本ですが、かなり細かい注も入っていて、大いに学んでいます!