鉛の被曝の長期的な影響

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アメリカの医学雑誌の一つに Journal of American Medical Association がある。アメリカ医学学会の機関誌であり、標準的・代表的なものなのだろう。19世紀の末に刊行を始めたので、この雑誌に発表された論文を目にしたことがある。
 
JAMAが掲載された論文を毎日通知してくれる。今日は現実を突きつける大きな通知で、子供時代に受けた鉛の被曝が大人になるまでの影響の問題である。場所はニュージーランドダニーデン (Dunedin) で、そこで1970年代に強い鉛の被曝を受けた500人以上に関して、観察を継続した長期的な研究である。特に、大人になった状態での精神医学的な影響である。ダニーデンは、当時は世界で最も鉛への被曝が強く、血中鉛の影響で大きな精神医学上な被害が出た。その状態は脱出したが、40年近くたった大人になった段階でも、精神・性格・気質などに影響を与えている子供が多い。英語がよく分からない部分もあるが、硬直的に日本語に訳すと、自意識と感じの良さは低く、神経質的な部分はより高いという。原文の英語を使うと、lower consciousneess and agreeableness, higher neuroticism である。
 
昨日はたまたま放射線の影響についての書物を読んだ。高田先生の放射能被曝の本である。彼が込めている、明るさと勇気を強調したメッセージ、つまり広島や長崎が核兵器の対象となって巨大な被害を受け、そこから人々が復興してきたというメッセージは、とてもいいなあと思った。人々の強さと強靭さを強調する論旨である。一方、今日のメールで送られてきた記事は、子供の時に鉛の影響を受けると、大人になってもその影響は人格に残っているという悲観的な側面である。うううむ。
 
しかし、私は数年前にダニーデンに仕事で行ったことがあり、そこではもちろん鉛の影響などは全く感じられなかった。移民の関係でスコットランドと強い結びつきがあり、英語がスコットランドのアクセントを強く持つ人々の明るさが感じられた。「ダニーデン」という市の名前自体が、ゲール語で「エディンバラ」にあたるものだという。娘のためにラグビーオールブラックスのマフラーも買った(笑)弱さを知った時には、こうやって強さを改めて実感しておく必要があるのだろう。
 

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JAMA の挿絵。少し暗さを感じますが、ここから出発したことも理解しなければならないのですね。