静岡の浮世絵展と疱瘡除けの鐘馗の幟

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静岡市美術館で「メアリー・エインズワース浮世絵コレクション」の展示。全体で200点も公開され、鈴木春信の歌舞伎の舞台、東洲斎写楽喜多川歌麿の歌舞伎役者のアップ、北斎富嶽三十六景や諸国名橋、広重の名所江戸百景や東海道五十三次などなど。個人のしぐさ、有名人のポートレイト、江戸の街の様子、旅行先の風景の名所など、とても楽しい。

医学史の研究者としては、喜多川歌麿による「5月5日の端午」を描いた美しい版画の中の「疱瘡除けに朱色で描かれた鐘馗の幟」に熱中した。正月、三月、五月、七月、九月と、5節句の風物を描く5枚続きで、母親、娘、息子の三人が季節性を持つ家庭生活を楽しんでいる様子が描かれる。その5月には鐘馗の幟。これは天然痘が流行したときに、家などに飾ったものと同じ概念である。麻疹の時にも使われたのかもしれない。なぜ5月かという質問はよく分からない。

鐘馗はもともと中国の道教の存在。唐の皇帝玄宗マラリアで苦しむ夜に夢を見て、鐘馗が登場して小鬼を撃ち殺す。事情を玄宗が聴くと、試験に落ちて自殺した官僚候補者だが、高祖皇帝が手厚く葬ってくれ、それに感謝するためにいいことをしているとのこと。(Wikipaedia) そこから病気から守ってくれる力を持つ存在となった。 日本では鐘馗は天然痘か麻疹に対して人間を守る力を持っているものの一つとして発展した。

伊藤, 恭子 and 内藤記念くすり博物館. はやり病の錦絵 : Nishiki-E, Color Prints of Infections. vol. 4, 内藤記念くすり博物館, 2001. くすり博物館収蔵資料集.