看護婦と軍隊の問題

Enloe, Cynthia H. Maneuvers: The International Politics of Militarizing Women's Lives. University of California Press, 2000.

フェミニズムの論客の一人であるシンシア・エンロー先生の著作を読んでみた。『策略』として日本語に訳されているが、これは抄訳である。日本が韓国やフィリピンで行った慰安婦や現地女性のレイプの問題が取り上げられている章や、私が読みたかった看護婦と軍隊を扱った章が訳されていないようである。慰安婦に関しては、日本が行ったことはもちろん、イギリス、アメリカ、フランス、韓国などが行った問題として各国の軍隊が売春のシステムを前線の直近に作ることが鋭く書かれているという印象を私は持った。ぜひお読みください! 

軍隊の看護婦については、まずはクリミア戦争でのナイチンゲールの活動とその後の戦争と密接にかかわる看護の分析、アメリカの南北戦争の看護、スペインとのフィリピンを場にした戦争での黒人兵の看護、第一次大戦の看護、第二次大戦の看護、ベトナム戦争の看護、そして世界各地での看護と続いている。緻密な研究というよりも、他の学者の優れた研究をまとめながら、彼女の分析も出しているスタイルで、読んでとても楽しい。軍隊の兵士の看護は、兵士の妻であり、兵士との間にロマンティックな甘い雰囲気を作り出すが実際の関係は持たない「硬い売春婦」のようなものである。細かい看護日誌などを読んでいるわけではないけれども、国際的な大きな構造がとてもよくわかった。

私の精神病院には兵士が直接入院はしなかったので、今書いている本では大きな分析はしないが、でも戦争に大きな意味がある節は必ず書く。もしかしたら章を書くかもしれない。そのためのいくつかのヒントを貰うことができた素晴らしい書物でした。