1980年代の日本の嫌煙とアメリカの嫌煙

Milov, S. (2018). "Smoke Ring: From American Tobacco to Japanese Data." Osiris. 33(1): 319-339.

アメリ科学史学会の年刊の機関誌である Osiris の資本主義と科学の特集号。私は資本主義の概念を使うことができないが、いまは色々な使い方を勉強している。その中で、1980年代に日本で起きた嫌煙運動とアメリカで起きた嫌煙運動の比較がとても面白いのでメモ。経済と情報の国際的な流れを分析する手法である。

アメリカの喫煙反対運動の一つの柱が、日本人の医師でがんの研究者である平山雄(ひらやま・たけし 1923-1995) がイギリスの雑誌に投稿した受動喫煙の論文である。これが取り上げられて、アメリカの喫煙反対運動が大きな力を得たことが知られている。一方で、この論文で初めて知ったことであるが、日本のたばこ産業は、1960年代からはアメリカで生産されたタバコの葉を積極的に取り入れていたという。1956年から68年まで、日本がアメリカから輸入するタバコは700%も増加したという劇的な上昇を見せていた。国際的にみると、アメリカのタバコが日本で消費され、日本の研究者が生産した受動喫煙の情報がアメリカの社会が利用したという。喫煙と嫌煙の売り買いが両国の間で成立して、日本の嫌煙運動が離陸するのに非常に時間がかかった理由がわかりました(笑)

平山雄については、日本のウィキペディアアメリカのウィキペディアの双方が記述を持っている。後者は英語のマテリアルしか使っていないのに、日本語のものよりもはるかに充実している。これも日本の医学史が発展するとすぐに充実するだろう。