医学におけるメタファー

The Public Domain Review. Selected Essays.
Soll, Jacob. The Reckoning: Financial Accountability and the Rise and Fall of Nations. Basic Books, 2014.

医学に関するメタファー論や翻訳論を読んでいる。

解剖学はヨーロッパの医学校における巨大な牽引力を持っていた。その一つが、医学生は解剖を本で読み図像を見るだけでなく、実際に手元で触れて、感触を持ち、それを憶えておかなければならないという心得である。ヴェサリウスの『人体構造論』は、これを積極的に利用した書物で、数多くの解剖学上のメタファーやアナロジーが用いられている・ metaphor and analogy help the students make the cognitive leap. この利用自体は、伝統を継続する中での新しい試みである。

ヴェザリウスが問題にして批判したのは、主にガレノスが用いたメタファーである。ガレノスは犬を解剖して肝臓を観察していたが、それを4つの部分に分けて、炉床、テーブル、ナイフ、戦闘士という名称をつけている。これが実際に四葉を数えているのか、それとも別のものを数えているのか、よく分からない。また、ヒトの肝臓は二葉であるが、どこを引用しているのか分からない。いずれにせよ、ガレノスにとって、肝臓は人体の中枢であり、そこがどのような構造なのかは非常に重要であった。他の中世やルネサンスの人々にとっても、アリストテレスの脳が重要であると議論と並んで、肝臓は非常に重要であった。

ヴェザリウスは、ガレノスの対象が実はイヌであったこともあり、比喩の利用を嘲笑する。しかし、ヴェザリウス自身もメタファーを使っていたからである。Vはパイプ、油、壁、柱、都市の通り、ワイン貯蔵所などの名称をつけている。細かい記述の前にこのような比喩的な表現が出てくる。