Hypericum とオトギリソウ

家で Gardens を読んでいたら、Hypericum の特集があった。日本語でいうとオトギリソウにあたる。黄色の鮮やかな色だが、西洋でも日本でもいずれもかなり強力な薬効があるとされている。以下は日本大百科全書からの引用。ジェラードによると、セント・ジョンズ・ウォートは、血液の色である赤い汁を持ち、血液に関した傷などに対する強力な薬であるとのこと。民俗学者たちによれば、そこに悪魔との闘いという主題、恋と結婚という主題など、非常に強い特徴を持っている。日本においても、秘伝の薬の意味合いが強い。オトギリソウの仲間にビヨウヤナギがある。

 

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ヨーロッパでは中世から最近まで聖ヨハネの祝日に薬草を集める風習があり、重要な年中行事の一つとして中夏節の祭りという。イギリスでは薬草として用いられるセイヨウオトギリソウを「聖ヨハネの草」St. John's-wortとよんでいる。6月24日の聖ヨハネの祝日は夏至のころで、太陽がもっとも強い時期であり、オトギリソウが黄色の花をつけるころでもある。この日の前夜に集めたものがとくに中夏節の薬草として効力が強いとされ、病気をもたらす悪魔を追い払う草としていた。
 また豊作を祈るたき火をこの日に行う風習があり、恋人たちもこの祭りを楽しんだ。中夏節前夜にこの草を枕(まくら)の下に敷いて眠ると娘たちは未来の夫の夢をみると信じ、壁にかけた小枝が朝までしおれなければ結婚相手は吉と占った。また中夏節前夜に騒ぎ回る悪魔たちの災いから逃れたり、落雷よけのために家の戸口や窓にこの草をつるす風習もある。
[杉山明子]
 弟切草という物騒な名は、寺島良安(りょうあん)の『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』(1713)によれば、花山(かざん)天皇(在位984~986)の代に、鷹(たか)使いの名匠晴頼(はるより)が鷹の傷を治すための薬草を秘密にしていたところ、それを弟が漏らしたために切り捨てたことから名づけられたと伝える。古くから薬として知られ、青薬(あおぐすり)の別名もあり、藤原定家は「秋の野にまだ枯残る青薬 飼ふてふ鷹やさし羽なるらむ」と詠む。また貝原益軒は『大和本草(やまとほんぞう)』(1709)で、雑草の項に分類し、切り傷の止血のほか、鷹と犬の病を治すと記す。現在でも陰干しにした全草を煎(せん)じてかぜや咳(せき)止めの民間薬に使い、焼酎(しょうちゅう)につけて薬酒をつくる。
[湯浅浩史]

からしぼった汁は打撲傷、切り傷の薬とし、煎(せん)じた汁は止血、うがい薬とする。また、茎、葉から製するオトギニンは関節炎、神経痛などに効く。漢名、小連翹。学名はHypericum erectum 《季・秋》