『大発作』が描く癲癇(てんかん)の兄について

B, David et al. 大発作 : てんかんをめぐる家族の物語. 明石書店, 2007.
 
これは1959年に生まれたダビッド・ベーという人物の兄が癲癇(てんかん)となったありさまを描いたもの。母やダビッドや妹のさまざまな努力にもかかわらず、兄の症状が次第に大きくなり、家庭が細部で崩壊していくありさまを描いたBDである。母が中心になってスピリテュアル系・ニューレフト系のさまざまな方法を試してみる様子や、ダビッド個人がどう感じるかを非常に正直に描いたありさまが非常に興味深い。背景に描かれる死や超自然の象徴も非常に面白い。あと、色々な問題を、核家族と医療系の二つで解決しようとしているありさまも面白い。
 
フランスの漫画をBD(ベーデー)と呼び、日本のマンガとアメリカのコミックと並んで世界の三大ジャンルであるとのこと。もともとはバンド・デシネ  (bande dessinée)で、「描かれた帯」の意味である。そのせいかどうかは分からないけれども、それぞれのコマというのかしら、それに関する規格がマンガよりは厳しく、帯状の形でストーリーが出てくる。
 

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背景の帯状の怪物たち。これも十分怖いのですが、裏表紙のほうが迫力があります。